次第にヒロのまぶたが重くなってきて、引き寄せられるようにソファーからベッドに移動する。

そして下だけを忍者のように素早く楽なスウェットに履き替えて、そのままごろんと横になってしまった。

……私が寝てるベッド……。いや、元々はヒロのものなんだからどこで寝ようとヒロの自由なんだけど……って!


「ほ、本当に寝る気?」

散々昨日は睡眠をとったはずなのに。


「寝るよ。寝溜めしとく」

すぐにヒロのまぶたが閉じてしまいそうだったから、私は慌てて呼び掛ける。


「じゃあ、お昼ごはん食べない代わりに夕方になったら外にごはん食べにいこうよ」

事前に約束しておかないと、ヒロはいつ起きるか分からないから。


「外食?いいけど」

「昨日もらったお給料で私がご馳走するね!」

このお金は絶対にヒロと使いたいって思っていた。海の家に誘ってくれたのもヒロだし、いつもお世話になりっぱなしだから、たまには私がなにかをしたいのだ。

そんな私を見てヒロがクスリと笑う。


「なら高級な寿司でも奢ってもらおうかな」

「お、お寿司!?」

その返しは想定してなかった。


回るお寿司なら大丈夫だけど、高級ということはたぶん回らないやつ。

そもそも一貫の値段とか全然分からないし、お給料の他に手持ちはあるけど、それでも足りなかったら……。

私がぶつぶつと頭を悩ませていると、ヒロは「嘘に決まってんだろ」と、意地悪な顔をしていた。


「も、もう!」

ちょっと内心ビクビクしちゃったよ。


「夕方になったら起こして。おやすみー」

ヒロは本当にそのまま寝てしまった。