「つーか、てめえが花火やろうって言ったのが原因だろ」

「いやいや、落としたのはヒロでしょ」

こっちに近づいてくる影と、ふたつの声に私は思わず後退りをする。


……どうしよう、怖い。


また指先が小刻みに震えてきて、早く立ち去ろうと立ち上がったけれど、ビーチサンダルが砂に埋まって足を取られてしまった。


「あれ?」

すると、フラッシュの光りが私へと向けられる。


「女の子がいるよ、ヒロ」

目が合ってしまい、さらに私の心臓が激しくなる。

私の気持ちとは裏腹に、もうひとりの男も私のほうに歩いてきて、逃げたいのに身体が上手く動かせない。


「あ?女とかどうでもいいから、さっさと俺のスマホ探せ」と、私の前に現れた男の人。

暗闇に目が慣れてきたせいで、顔がはっきりと見えてしまった。


身長が高い人は苦手なのに、隣でフラッシュを私に当て続けている人よりも高くて、体格や肩幅も私の怖さを逆撫でするぐらい〝男〟って感じ。

声も低いし、なにより目つきが悪くて、私に睨むように見ている気がする。

 
逃げなきゃ。早く逃げなきゃ……。

私は一歩、また一歩と、必死で重たい足を後退りさせる。