と、その時。砂に手をついた私はなにか硬いものに触れた。一瞬、石かなと思ったけれど、手に馴染む感触は明らかに自然物ではない。
「これって……」
確認するように拾うと、それはスマホだった。黒いフォルムは私のものとは違い、どうやら誰かが落としたようだ。
まさか夜の砂浜でスマホを見つけるとは思わなかったけど、こういう場合ってどうしたらいいのかな。
多分、落とした人は必死で見つけてるだろうし、ここで遊んでいたのならきっと探しにくるはず。
元あった場所に戻しておく?
それとも見つけやすいように海岸の手すりの下にでも置いたほうが親切だろうか。
スマホを見つめながら、そんなことを悩んでいると、どこからかバイクの音が聞こえてきた。
明らかにマフラーを改造している音は静かな海ではよく響く。
眩しいヘッドライトの明かりはふたつ。それは海岸沿いの路肩に停まった。
階段を使わずに慣れたように段差を飛び越えてきた黒い影は私と同じ砂浜へと下りてきた。
「昨日どの辺で遊んでたっけ?」と、暗闇で懐中電灯代わりにスマホのフラッシュ機能が光る。
そんな男の人の声にドキッと、心臓が動揺した。