それでも、きっと私は今日もまたあの日々の悪夢を見て、うなされるのだ。
ケラケラと笑いながら私を殴る男と、それを見ているだけの母。
痛さで床にうずくまる私を放っておいて、ふたりは外食へと出掛けて、ドアがパタリと閉まると、私はやっと痛がることも泣くことも許される。
そんな5年間を繰り返すように見る夢は、あのふたりから離れたところで、なにひとつ苦しさなんて終わっていないんだと思い知るんだ。
いっそのこと、このまま海に沈んでしまったほうが楽かもしれない。
別に私がいなくても誰も困らないし、必要ともされていない。
そんなことを夢と同じように繰り返し思っている私は、きっと心の中で自分が消える日を選んでいるのかもしれない。
だからこうして夜の海にくる。
一歩踏み出せば、いつでも死ねる。
この穏やかな海は私を遠くへと運んでくれる。
そんな安心感だけが、今の私を唯一繋いでくれている。