開誠(かいせい)女子高等学校に入学して早3か月。
窓は全開に開いているのに風通しが悪い。なのにクラスメイトたちは一斉に汗を抑えるパウダーを肌に塗り始める。
教室に漂う甘ったるい匂い。
みんな『海みたいに爽やかでいい匂い』なんて言ってるけど、私はあまり好きじゃない。
暑さと匂いで頭が痛くなってきた私は、もうすぐ次の授業がはじまるのに席を立つ。
そんな私を気にする人なんて誰もいなくて、そのまま廊下に出て屋上へと向かった。
「……はあ」
屋上に着いた私は日陰になっている貯水槽の下に座る。教室よりは風を感じることができるけど、やっぱり暑い。
私は誰もいないことを確認して、制服の上に羽織っていた黒いパーカーを脱いだ。
露(あらわ)になった腕はあえて見ない。
その代わりスカートのポケットからイヤホンが繋がっているスマホを出して耳に装着する。
適当に選択した曲はとてもノリのいいメロディーだったけど、私の気分は沈んだままだ。