「こら八雲!」
女将さんが足を大きく広げて叫ぶをのを、私は「いいんです」と気持ちを落ち着けてもらう。
「きっと緊張してるんだと思うので」
近寄りたいけれど、少し怖い。
そんな気持ちが逃げに走らせる。
それは私にも経験があるからよくわかる。
あとで少し話しておくからと女将さんは言って、洗濯物をまた干し始めた。
私も続きを手伝っていると、みなか屋の店主である旦那さんがやってきて、ヒロに大きな発泡スチロールの箱を手渡した。
お礼を告げて受け取ったヒロは、帰る前に私に声をかけてくれて。
「大丈夫そうか?」
「わからないけど……少し頑張ってみる」
「そうか。お前なら八雲の気持ちもわかってやれるだろうし、うまくいくよ」
「うん。ありがとう。それと、定食のお代もありがとう」
これだけはちゃんと言わなければと、奢ってもらったお礼を口にすると。
「まあ、安いクリスマスプレゼントってことで」
気にするなと微笑んだ後、なにかあれば手伝うと言ってくれて。
ヒロが鳴らすバイクのエンジン音を聞きながら、私はまたシーツを手にし、広げる。
ふわりと清潔な香りがして、私はそれを肺いっぱいに吸い込んだ。