冷え切った体がナギの温もりで暖められていく。


「会いにきてくれて、ありがとう、凛」


冬桜が静かに散りゆく中、耳元で囁くナギの切ない声に唇が震え、肩越しに見上げた月がひどく滲む。

彼の肩に額を押し付けて、そっと抱きしめ返せば、ナギの唇から吐息が零れて。


「今度は、俺から会いに行くから」


目覚めたら、必ず。

誓った刹那、強い風が吹き抜けて、大きく桜の木々を揺らした。

舞い上がり、雪と共に踊る桜の花びら。

私たちはその幻想的な光景を寄り添って眺める。


「ああ……綺麗だな」


ナギの心地よい声が紡がれて。


「うん……とても」


私が頷くと、ナギは幸せそうな優しい笑みを浮かべ私を見つめ……。

冬桜の香りと、僅かなぬくもりだけを残し。



雪に溶けるように、消えてしまった──。