「政府に戻そうと思ってるの」

ピンクパールのネックレスを指先で遊びながら、こんな私に言い訳がましく口を滑らせる。

「政府が引き取って育ててくれる。『お前の好きにしなさい』ってパパも言ってくれた。次の子は一生懸命育てようと思うの」

「安全に政府が育ててくれるんですか?守ってくれるんですか?」

「そんなの知らないわよ」

責めたような私の言い方に、彼女は軽くムッとして爪を噛む。

この世で信じられるものは何だろう
自分自身も信じられないのに

この子はどうなるんだろう。

私は手を伸ばし
彼女に聞きもせず子供を抱き上げる。

「何するの?離しなさい汚らわしい!」

甘い匂いがする。
柔らかくて懐かしくて
思ったよりズシリと重い。

子供は私の顔を見てニッコリ笑った。

だからもう
それだけで
私の気持ちは強く固まる。

政府に戻しても
捨てられた子は皆同じ
階級なんて関係なく

行先は臓器移植の為のモルモット。

切り捨てられて死んでしまう。