そのあとおばあちゃんは、テーブルにおせちを並べてくれた。
おせちはふたりで食べるには多いぐらいの量で、紅白かまぼこに伊達巻、錦玉子に栗きんとん、それから黒豆に昆布巻き。
普段はあまり食べないものばかりだけど、口に入れている内に、徐々にお正月を実感してきた。
「お雑煮も食べる?」
「うん」
「お餅は何個?」
「うーん。じゃあ、ふたつ」
そういえば、お正月が終わる頃にはいつも私の顔がお餅みたいになってたな……。
そんなことを思いながらも、おばあちゃんが作ってくれた、鶏がらの濃い醤油味に砂糖多めの甘い味づけの雑煮は美味しくて、結局、私は二杯もおかわりをしてしまった。
「あら、小枝はまだ数の子食べられなかったの?」
ひと通り手をつけたけれど、数の子だけは形を変えずに綺麗に残ったまま。
「う、うん。食感がさ……」
あのプチプチとした感じが昔から苦手で、数の子だけはどうしても食べられない。
「すごく美味しいのよ?」なんて言いながらおばあちゃんが数の子を口に入れて、その音を聞くだけでゾワッと寒気がしてくる。
「おせちにはひとつひとつ意味があるんだから、好き嫌いしないで食べなきゃダメよ」
「……う、うん」
素直に頷いたけれど、箸は数の子ではなく、隣の栗きんとんへと伸びる。
「数の子にはね、子孫繁栄の意味があるんだから」
「へえ」
「そういえば、小枝は好きな男の子いないの?」
「……ゲホッ、ゲホッ!」
思わずお雑煮が鼻から出そうになってしまった。