俚斗の彼女なんかじゃないけど、俚斗に彼女がいてもそれはこの人には関係ないことで、ああだこうだ言われる筋合いはないと思う。
「悪いことは言わねーからアイツはやめとけって」
「は?なんでそんなことアンタに言われなきゃいけないの?」
また俚斗に叱られちゃうかもしれないけど、ごめん。私には言い返さないなんてムリだった。
「言っとくけど、この前言ったことは本当だぜ?俺の知り合いが喘息で倒れた時、吉沢は目の前にいたのになにもしないで見てるだけだった。危うく呼吸困難で死ぬところだった」
「だからそれは俚斗が……っ」
思わず奇病のことを言ってしまいそうになったけど、俚斗が隠していることを私がペラペラと喋るわけにはいかなと口を閉じた。
それでも誤解されている俚斗が可哀想で、蓄積されたモヤモヤは増すばかり。
「アイツは施設でも浮いてるし、ずっと部屋にこもりっきりだし、飯も風呂も人がいないことを確認して済ませるようなヤツだぜ?」
ちょっと待って。今この人なんて言った?
「吉沢はそういう人と関われない性格なんだよ。最初はみんな気にしてあげてたけどアイツがあまりに拒絶するからさ。あれじゃ気味が悪いって言われても仕方ねーよ」
「………」
「まあ、アイツも俺と同じで来年には施設を出ていかなきゃいけねーし、生活とかどうすんのかね」
寺本の話に付いていけない。
「し、施設って?」
声が上擦りそうになった。
「は?児童養護施設だよ。俺アイツと同じ施設で暮らしてるって……。まさか彼女なのに聞かされてなかったの?」
風邪のせいか熱のせいか足が宙に浮く感覚がした。