それから5分足らずで家に着いてしまった私は外から帰ってきたというのに身体が熱い。
そんな気持ちはその日の夜から布団に入って寝つくまで続いていて、ふわふわと頭が空に浮かんでるような感覚。
寝つきの悪い私がスッと意識を失うように眠ることができて、今日はなんだかいい夢が見れそう、なんて思いながら見た夢は私の心とは反対に全然いい夢なんかじゃなかった。
またいつものように私をまっすぐに見つめる顔。
幼いままで止まっている〝きみ〟はいつも険しい顔をしていて、あの頃のように笑ってくれない。
『なあ、どうして小枝が……』
またその言葉を言うんだね。
ごめんね。少し浮かれてた。私らしくなかった。
きみはもう笑うことも泣くことも怒ることもできないのに、私だけどうしてって責めてるんでしょ?
大丈夫。忘れてないよ。
私はきみを置いて幸せになったりしない。
だから、せめて夢の中だけでいいからもう一度笑ってよ。大樹(だいき)。