……俚斗は恋をした経験があるんだろうか。それとも大切な人がいたりする?

やっぱり知らないことばっかりだね、私たち。


なんだか少しだけ寂しい気持ちになって、そろそろ出ようとした時、私の視界がピタリと止まった。

そこにあったの花の形をした髪留め。

バレッタと呼ばれる片側の金具で止めるタイプで、ガラスの花が角度によって色を変える。

左に傾けると青。右に傾けると赤。真正面から見ると無色透明だけど、私にはピンク色に見えた。


「へえ、色が変わるなんて面白いね。小枝みたい」

気づけば俚斗が隣にいて、ビックリていうよりも語尾にあった言葉のほうが気になって仕方ない。


「私みたいって……どういうこと?」

私が面白いって意味なのかな。あまり冗談は言わないし、冷めてる性格だって自覚してるから一番面白いとは程遠いところにいるんだけど……。


「だって小枝って右を見れば平然としてるのに左を見ると落ち込んでたりするでしょ?いつも思ってたんだ。口から出る言葉は強気なのにいつも自信なさげで、気づくとぼんやりと下ばかりを見てるから」

……まさかそんな風に俚斗から思われてたなんて知らなかった。

……図星すぎて否定もできないし、むしろそんなに私のことを観察しなくてもいいのに。