「小枝はなにかお土産とか買わなくていいの?」
……お土産、ね。そんなことこれっぽっちも考えてなかった。
「べつにいらないよ。思い出作りに美瑛に来たわけじゃないし」
思わず冷たい言い方をしてしまってハッとした。雰囲気を乱さないように私は慌ててアザラシの置物を触る。
「り、俚斗こそなにか買ったら?これ可愛いし、なんなら買ってあげるよ」
「え?」
「だ、だってほら、プリンだって結局俚斗が美瑛サイダーと一緒に買ってくれたじゃん。だからそのお礼というか記念というか、せっかくだし……」
私はなにを慌てているんだろうか。しどろもどろになりすぎて少し恥ずかしい。そんな私を見て俚斗はクスリと笑う。
「気持ちだけもらっておくよ」
たしかに俚斗が私からなにかを買ってもらうことを了承するはずがない。
普段はのほほんとしているけれど、車道を歩くときはいつだって俚斗は歩道側を歩くし、お店に入るときもドアを開けて私を先に入れてくれる。
そういう女の子への扱い方が丁寧だから俚斗はモテるだろうなって思う。本人が無自覚なのが残念だけど。
「それにプレゼントは好きな人に送るものだよ」
急にそんなことを言うからドキッとしてしまった。