「でも俺はもっと違う季節の景色も小枝と見たいな」
「うん。そうだね」
「今度は電車に乗ったりしてさ」
「はは、いいね」
想像すればするほど膨らんでいく俚斗とやりたいことや行ってみたい場所。
なのにどうしてだろう。
季節はこれからも移り変わるのに、俚斗はこの雪景色の中にしかいないような気持ちになるのはなんでなの。
「あ……」
それから写真館を出て、私はその途中で小さな木造作りのお店を発見した。一見分かりにくい場所にあるけれど、しっかりと店の看板には〝アクセサリーショップ〟と書いてあった。
「入ってみる?」
「え……」
「せっかくだから行こうよ」
俚斗に言われてお店に入ると、中にはキラキラとしたガラス細工やアクセサリーがたくさん置いてあった。
この町にこんなお店があったなんて知らなかった。店内は真新しい木の匂いがしたから、もしかしたら最近オープンしたばかりなのかもしれない。
「見て見て」
そう言って俚斗が指さしたのはガラスで作られた可愛い置物。
「アザラシ?」
「え、アシカじゃない?」
ちょっと私には見分けがつかないけれど、つぶらな瞳が癒される。
「俺の部屋は殺風景だから、こういうのを置けばなんだか明るくなりそう」
俚斗の口からふいに出た部屋という言葉。
……そういえば俚斗のプライベートなことってなにも知らないな。私も言えてないことのほうが多いし、私だけ一方的に聞くのはズルい気がして。