すると私たちの間に割り込むように寺本が入ってきて、まるで煽るような目つきで俚斗のことを見る。


「お前さ、本当に喋んないヤツだよな。いっつもひとりでいるし、なに考えてるかわかんねーし、そんなんだから周りから気味悪がられるんだよ」

何故だか私のほうがモヤモヤとしていた。

なにも言い返さない俚斗にじゃない。俚斗のことを気味が悪いと言ったこの人に対してだ。


私が寺本を睨むとニヤついた口元で「もしかしてコイツの彼女?はは、まさかね」とふざけた言い方をしてきたから、私はさらに目つきを強くする。

「寺っち睨まれてんじゃーん。あんまりいじめないであげなよ」なんて、周りから高笑いが聞こえる中、寺本がグイッと私の肩を引き寄せてきて、そのあまりの至近距離に鳥肌がたった。


「あんまり吉沢と一緒にいないほうがいいよ。めちゃくちゃ変わってるし、きみもそう思われちゃうよ?」

「は?」

「いつもビクビクしてるしさ、今だってきみのこと全然助けようともしない。ひどいヤツだろ?目の前で人が倒れてても見て見ぬふりする冷酷なヤツなんだよ」


……助けない?ひどいヤツ?冷酷?

なにそれ、だれのこと言ってんの。


俚斗を見ると唇を噛み締めて、もどかしそうに拳を握りしめていた。こんな人にさえ俚斗は傷つけたくないからって触れるのを我慢している。

どこが冷酷?ふざけんな。


「遊び相手がほしいならコイツじゃなくて俺が……」

「触らないで!」

私は寺本の身体を勢いよく突き飛ばした。