家はひとり暮らしでは広すぎるくらいの大きさで、リビングは暖かいけれどその他の部屋は外のように冷たい。

だれもいない家に帰ることの寂しさなら私にも分かる。

おばあちゃんがひとりで暮らしていると知っていて、それでも今日まで疎遠になってしまったこと。

すごく申し訳ないのに、それでもこうして昔のように私を出迎えてくれたことに感謝しかない。



「ごめんね。今まで来れなくて」

「ううん。いいのよ。小枝がこっちに来たいって連絡してくれた時は本当に嬉しかった。だからポトフも作りすぎちゃった」

「……おばあちゃん」


「尚子は元気……?」


おばあちゃんが詰まるような声で言った〝尚子〟とは私のお母さんのこと。つまりおばあちゃんの娘。


「元気だよ。相変わらずだけどね」

この相変わらずには色々な意味が含まれていたけど、これ以上言わなくてもおばあちゃんには理解できたらしく「そう」と、小さな声が返ってきた。