「俺と同じ目をしてたから」

「………」

「だから放っておけなかった。今だってそうだよ。小枝は強く見えるけど全然そうじゃないし、内に秘めた悩みを絶対に言葉にはしないから」

見透かされてると思った。

でもそれはそっくりそのまま俚斗に返すよ。俚斗だって決してその胸の内を話してはくれない。

話せないほど、私たちは弱くて脆い。


どうして苦しい思い出ほど頑固でこびり付いた錆(さび)のように簡単に剥がれてはくれないのだろう。それは時間が経てば経つほどに厄介で難題で、胸に強く貼りついたまま。


ねえ、俚斗。

私は本当に俚斗となら逃げてもいいと思った。


誰のことも好きになれない私だけど、俚斗のことは嫌いだと一度も思ったことがない。それは私にとってはすごいことなんだ。


だからさ、本当に本当にふたりで逃げちゃおうか。

そんなことを実行できる度胸も覚悟も責任もないけれど、俚斗が本気で私のことを連れ去ってくれたら、私は傷ついても迷わずにその手を握るのに。