「小枝は?冬休みが終わったら東京に帰るんでしょ?」

「………」

すぐに答えることができなかった。

これ以上おばあちゃんに甘えることはできないし、迷惑もかけられない。だけど冬休みが終わったあとのことを考えるだけで気分が憂鬱になる。もう憂鬱を通り越してこのまま滝に飛び込んでしまいたくなるぐらい。

……ああ、まただ。

色づいていたものが一瞬でモノクロになる。


「一緒に逃げちゃう?」

闇に落ちそうだった私の心は俚斗の言葉で引き上げられた。ビックリして固まっていると、さらに俚斗が柔らかい表情で言う。


「誰もいない場所。俺たちだけで生きられる場所に」

本当にどこまでが本気で、どこまでが冗談なのか分からない。それでも瞳の奥が熱くなって、気を抜いたら涙が溢れてしまいそう。

そんな気持ちをグッと我慢して、私はコバルトブルーに染まる美瑛川の流れを一点に見つめた。そして……。


「俚斗はどうしてあの日、青い池で私に声をかけてくれたの?」

ずっと気になっていたこと。

もしあのとき俚斗が話しかけてくれなかったら、こんな風に肩を並べることもなかったかもしれない。