「とりあえずなにか食べる?お腹すいたでしょ?小枝が好きだったポトフ作ってあるわよ」

「本当?」

自然とこたつの中に入った私はやっと一息つくことができて、なんだか肩の力が抜けてしまった感じ。

「はあ……」とこたつとストーブの暖かさに包まれていると、台所に向かったはずのおばあちゃんがなにかを思い出したように振り向いた。


「バタバタしちゃっていい忘れてた。おかえり。小枝」

「……うん。ただいま」


そのぎこちない〝ただいま〟は照れくささだけじゃない。こんな風に言ってもらったのはどれくらい振りだろうか。

遡っても記憶が浮かばないほど、私はただいまもおかえりも言っていない。


おばあちゃんが作ってくれたポトフにはじゃがいもや人参、玉ねぎやウインナーがたっぷりと入っていて、ひと口飲んだだけで身体の中がポカポカになった。


「やっぱりこっちの野菜は味が違うね」

上手く表現できないけれど野菜はどれも甘くて香りが好くて、野菜嫌いの人が北海道のなら食べれるというぐらい味が違う。

さすが食の国って感じ。


「ふふ、でもね。今は野菜もスーパーで買ってるの。この歳で畑仕事は疲れるし、ひとりじゃね……」

ポトフを食べながらおばあちゃんの下がった眉毛を私は見つめる。