「なにが嫌いなの?」

「……全部」

学校もクラスメイトもあの雰囲気もなにもかもが嫌い。


「でもそれ以上に私は自分のことが大嫌い。だから誰のことも好きじゃないし、関わりたくないし、信用だってできない」


私はどんな人間で、どんな性格で、どんな話をしてみんなと打ち解けたらいいのか分からない。

自分自身とも向き合えていないのに、他の人と向き合う方法なんて私は知らない。


「じゃあ、同じだ」

「え?」

「俺も奇病が原因で小学校も中学校もずっと不登校だったよ。学校は協調性を求める場所だからこの奇病とは相性が悪くて。だから高校にも行ってない」

「………」

「世間から見たらただのプー太郎」

行ってないのと、行けてないのは意味が違うと思う。それに……。


「学校なんて真面目に行ってもプー太郎になる人はなるよ」

協調性を学んでも協調できない人もいるし、いい大学に行ってもダメ人間になる人はなる。

べつに学校が全てじゃない。

だから行っていない自分のことをそんなに否定するような言い方はしなくていいと思う。……なんて、私が偉そうなことは言えないけど。


「はは、ありがとう。だから俺も小枝の気持ちがわかるよ。俺もひとりが楽。ひとりは自由だし、なにをしても、なにを思っても、なにを考えても自由。誰かに縛られることはない。やっぱり俺たちは似てるね」


俚斗は笑ってた。だけど瞳の奥に一瞬だけ見えた感情は寂しさだった。