「今日も手伝ってくれてありがとうね」
雪かきが終わったあと、おばあちゃんは温かい朝食を作ってくれた。テーブルには炊きたてのご飯に大根のお味噌汁。おばあちゃんが漬けたぬか漬けのきゅうりに脂がのったしまホッケの焼き魚。
まるで料亭のような朝ごはんに感動しつつ、私は甘味のある白米の味を噛み締める。
「ねえ、おばあちゃん」
「なに?」
「北海道に雪女の伝説ってあったよね?」
昔はそんな都市伝説の番組がいくつも放送されていて、それを見た日の夜は怖くて眠れなかったっけ。
「雪が降る地域にはだいたいその手の話は付きものよ。急にどうしたの?」
「ううん。べつに」
私は誤魔化すようにぬか漬けを食べてきゅうりの音を響かせる。
俚斗の身体のことを知って、私はなんとなく雪女のことを思い出した。
雪女も身体が冷たく愛した男性の体温さえ奪ってしまう話。地方によって話は異なるけれど、誰かを待ち焦がれて、その望みが儚く砕けてしまう雪女の伝説はどれも悲しい結末だった。