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そこからおよそ30キロの道のりを走って、予定よりも早くおばあちゃんの家に着いた。
北海道の上川郡(かみかわぐん)にある町、美瑛町。
日本で最も美しい村だと言われている美瑛(びえい)の景色は本当に綺麗で、この吹雪さえもパノラマのひとつにしてしまう。
「車庫に車停めてくるから先に入ってて」
「わかった」
おばあちゃんから鍵を預かった私は玄関へと続く階段を登る。北海道では雪で玄関が塞がらないようにこうして入り口が高くなっているのが一般的。
玄関が開かなくなるほど雪が積もるのかって話だけど、それがひどい時には一階を塞ぐほどの積雪があるっていうんだから、やっぱり東京と雪国は違う。
家の中に入って身体についた雪を払いながら、一番最初に目に入ったのがちょっと不気味な日本人形。
……まだこれ置いてあったんだ。
そういえば昔はこれが怖くて家の中に入れないこともあったっけ。今冷静に見ると愛らしい顔をしてる気がするけど、それだけ私が成長したってことなのかな。
おばあちゃんの家はその他も全然変わりはなくて、クマの木彫りやだれか書いたか分からない掛け軸も全部昔と同じ。
唯一変わったことといえばテレビが大きな地デジになってることぐらいだ。