「小枝、離ればなれにはならないよ」
張り裂けそうな私の心を溶かすように、聞こえてきた声。
「俺はいつも小枝の近くにいる。悲しいことや苦しいことがあっても小枝の背中を押せるぐらい傍にいる」
「俚斗……」
「でも、最後に本音を言っていいのなら、もう少しだけ一緒に生きていたかったな」
次に俚斗の涙を拭ったのは私のほう。
強がりで、いつも笑っていた俚斗が、初めて弱さを見せてくれた。
愛しさと悲しさと、両方の気持ちがあるけれど、その涙を拭いてあげられることがなにより嬉しい。
「小枝」
俚斗がビー玉のようないつもの瞳で、まっすぐ私を見る。
「ありがとう」
星が滲むオーロラの下で、俚斗は眉を下げて柔らかく微笑んだ。
「俺と出逢ってくれて、触れてくれて、抱きしめてくれて。小枝がいたから幸せだった。すごく……すごく、幸せ、だったよ……」
そして俚斗はゆっくりと目を閉じた。
「……っ……俚斗……」
その顔はとても綺麗な顔をしていた。
穏やかで、安らかで、苦しみなんてひとつもない、いつもの優しい俚斗の顔だった。