こんなにも瞬きするのが惜しいと思うほどのものを大切な人と一緒に見られたことを、私は一生忘れない。
今の俚斗の顔もそう。これから先、嬉しいことがあったときも、悲しいことがあったときも、私は俚斗を思い出すだろう。
「小枝、ありがとう。もう俺はこれで……」
息苦しそうに言う俚斗に私は手を伸ばす。
そして、ゆっくりとその顔に触れた。
俚斗の肌の感触と同時に、チクリとした痛みが手のひらに広がる。
でも、私は俚斗から手を離さない。
ずっと、我慢していた。
求めることも、触れることも。でも、これが最後だから、奇病という壁に邪魔はさせない。
「さ、小枝……っ」
慌てて離れようとする俚斗を今度は力いっぱい引き寄せて、そして、私は俚斗にキスをした。
……ドクン、と俚斗と同じ鼓動の音がする。
触れ合っている部分から、激しい痛みが身体の中へと入り込んできたけれど、それは次第に収まっていく。
まるで時間が止まったかのように周りが静かだった。
ゆっくりと唇を離しながらも、私の両手は俚斗の頬に触れたまま。もう痛みは感じない。
「俚斗、見て。大丈夫でしょ?」
私は触れていた手を俚斗に見せた。