俚斗は『ひとりは自由だ』と言った。『なにをしても、なにを思っても、なにを考えても誰かに縛られることはない』と。


たしかに、その通りだ。

ひとりで満たされるもの、ひとりで完結してしまうものがたくさんある。


だけど、その自由の中には、誰かと分かち合う喜びは存在しない。

一緒に笑い合ったり、泣いたり、怒ったり、慰めたり、喜んだり。誰かとじゃなきゃ生まれないものは、ひとりで得るものよりずっとたくさんあって、それは自由でいることより尊いことかもしれない。


それを私は俚斗と分かち合いたい。

そして、一つひとつ目に焼き付けるの。


いつでも俚斗を思い出せるように。

いつでも俚斗を感じられるように。


「ハア……ハア……」

暫く歩いて、私たちは足を止めた。


そこは、小高い美瑛の丘。

登り坂ばかりで足がガクガクとしているけれど、上を見上げれば空が近くて、星も掴めるんじゃないかと思うぐらい。
 

俚斗は、力が抜けるようにその場に座った。

後ろにはふたつの足跡が仲良く並んでいて、だれも足を踏み入れてない雪の絨毯(じゅうたん)が周りには広がっている。