「……俚斗」

息をはくように名前を呼んだ瞬間、私は床に落ちていたなにかを踏んでしまった。

どうやらテレビのリモコンだったようで、静かだった部屋にテレビの音が響き渡る。


夕方のニュース番組をやっていて、映し出されていたのは見慣れた雪国の景色。そして、興奮気味に原稿を読む女性アナウンサーの声が流れた。


『本日、北海道でオーロラが発生すると先ほど気象庁が発表しました!11年ぶりの観測となる今回は、前回よりも条件が非常に揃っていることから、肉眼で見える色は――』


まだニュースが続く中で、私と俚斗は呼吸を合わせるように目を合わせる。

ずっと、俚斗の心が読めたらと思っていた。

でも今は見つめ合っただけで、なにを考え、なにを言おうとしてるのか分かった。


「俚斗、行こう……!」

きっとこれが最後かもしれない。

ううん、最後なのだ。


今の私に俚斗の全部を受け止めることはできないかもしれないけど、支えることはできるはず。

だから、きみが望むこと、きみが見たかったものを一緒に叶えたい。それが私から俚斗へ最後にしてあげられることだと思うから。

俚斗は、私の言葉に「うん」と力強く頷いた。