自分を見失いかけていたときに俚斗に出逢って、そして私たちは離れた。
幼さを理由にして、なにもできなかった7年前。このバスで付けられた右手の傷の原因さえ、当時はなにひとつ聞くことができなかった。
あの時、勇気を出して聞いていたら、俚斗はなんて言っただろうか。
奇病のことを幼い私にも話してくれた?
それとも傷つけてしまった罪悪感で友達ではいられなかった?
あの時、聞けなかったからこそ、俚斗が以前言っていた綺麗なままの思い出だけで私たちは終われた。
もしかしたら、今の俚斗もそれを望んでいるのかもしれない。
悲しみも、苦しみも、残らないように。笑顔でまたさよならを言えるように俚斗は私に弱さを見せないという選択をしたのかもしれない。
でも、ごめん。
私は、そんな関係ではいたくない。
俚斗に伝えたい言葉が、こんなにも胸に溢れている。
とにかく、会いたい。会いたくてたまらない。
そして、バスは原野6線に停まった。
「さっさと歩けよ」
寺本は不機嫌ながらも、私の前を歩いて道案内をしてくれた。