私はいつだって自分の気持ちが優先。俚斗という存在に甘えて、頼ってほしいと願いながらも、受け止める強さなんて全然ない。
俚斗が私に弱さを見せられないのは当たり前だ。
一緒に倒れてしまうぐらいなら、俚斗はひとりで倒れることを選ぶ。
そんなだれよりも優しい人だから、私が受け止められないことを分かっていたのだろう。
重荷になりたくない。できればずっと笑顔でいたい。そんなふうに、病気の苦しさを隠して私と会っていた日もあったかもしれない。
今までの自分だったら、こんなときは逃げ出してしまっていたと思う。
でも、少しだけ強くなった私は逃げるのではなく、受け止めることができるはず。
俚斗のことだけは諦めたくない。譲れない、絶対に。
「私を俚斗のところに連れてって……!」
私は寺本の洋服を勢いよく掴んだ。
それからほどなくしてバスが来て、私は寺本と一緒に乗り込んだ。すぐに降りられるように、座席は入口に近い一番前。その隣では寺本が深いため息をついている。
「あのさ、俺、彼女と遊ぶ約束してたんだけど」
キレ気味に言いながら、スマホでなにやら文章を打ち込んでいる。おそらく彼女にメールをしているんだろう。
俚斗がいつも降りている原野六線まではさほど遠くないはずなのに、バスの進みがゆっくりに感じてしまう。
「そんなに吉沢が心配?ただの体調不良じゃねーの?」
私はなにも答えず、ただ窓の外ばかりを見ていた。
バスの揺れを感じながら、何故かふと、7年前にひとりでバスに乗ったことを思い出していた。