「いや、詳しくは知らねーけど、なんか身体のあちこちが痛いとか言って倒れたんだよ。それで病院に行ったけど、なぜかすぐに帰ってきてさ」
イヤな予感がする。ものすごく胸騒ぎがして気持ち悪い。
「相当具合が悪いみたいで、昨日からずっと寝てるんだよ。なんか職員たちもコソコソと慌ただしいし、かやの外にされてる感じが気分わるいっていうか――」
寺本の言葉がぼんやりとしか耳に届いてこない。
俚斗は、どんな時でも青い池に行くことをやめなかった。だってあそこは、俚斗が唯一、心を許せる居場所だから。
いつもは体調のわるさを表には出さないのに寝込んでしまい、そこに行くことができないほど、俚斗の身体は限界を迎えているのだろう。
ううん、限界なんてとっくに越えていたのかもしれない。
命の期限とされていた5年を過ぎても、俚斗が気休めにしかならない市販の薬でなんとか身体の不調を抑えこんでいたことに、本当は気づいていた。
だけど私はそれに気づかないふりをしていた。
心のどこかで、俚斗は病気に打ち勝ってくれるんじゃないか、このまま変わらずに隣にいて笑ってくれるんじゃないかと、そう思っていた。
……いや、思いたかったのだ。
俚斗を失うことが、俚斗と離ればなれになるのが、怖くて。