お母さんとのやりとりを話している内に、あっという間に日が落ちて帰る時間になってしまった。遊歩道を逆戻りして、バス停へと向かう。

バスが来る間も俚斗と他愛ない会話をしていると急に俚斗が苦しそうに背中を丸めた。


「え、り、俚斗……!?」

突然のことでなにが起きたのか分からなかったけれど、俚斗は胸の当たりを痛そうに押さえている。

具合が悪いというよりは、内側の痛みに苦しんでいる感じ。


「ど、どうしたの?」

思わず背中に手を伸ばしたけれど、俚斗が『ダメ!』と強い口調で言った。やっぱり俚斗は私が触れることを許してくれない。


「だ、大丈夫、大丈夫……だから」

俚斗は私に心配かけないように笑みを浮かべている。それでもどんどん息が上がっていって、私は心配よりも恐怖心のほうが強い。


「小枝っ……。ごめん。水買ってきてくれる?」

きっと痛み止めの薬を飲みたいのだろう。私は「わかった!」とバス停から走って自動販売機を目指す。手が震えてボタンがうまく押せない。

なんとか水を抱えて俚斗の元へ戻ると、さっきよりも身体を小さくしている俚斗がいた。


「俚斗っ……!」

急いで水を渡すと、キャップを開けて、薬と一緒に流し込んだ。


……こんなときに背中も擦れないなんて、なんて私は無力なんだろう。

ただ顔を歪める俚斗を見てることしかできない。


暫くすると、俚斗の呼吸が落ち着いてきた。

だけど、これは一時的な効果に過ぎない。目に見えない病は長い間俚斗の身体に住んでいて、こうして確実に蝕(むしば)んでいく。


どうすればいいの?どうしたらいいの?

すると、私の不安を拭うように俚斗がやっと顔を上げた。