その日の夜、夢を見た。

大樹が私をじっと見つめていて、それは悲しくて切ない瞳だった。


『なあ、どうして小枝が……』

今までの夢はここでいつも終わっていたけれど、今日はその続きがあった。


『そんなにツラそうにするの?俺は小枝のことを責めたことなんてない。いつも、いつだって、小枝が生きててよかったって思ってた』


いつも責められてる気がしていた。

でも本当は違った。きっと大樹は、怒っていたんだ。


私なんてとか、どうせ私はとか、そんなマイナスなことを言って、自分自身を否定し続けていたから。そんな気持ちも知らずに、私は大樹からも目を背けていた。


『笑ってよ、小枝。それで、俺のぶんまで生きて』

「大樹っ……」

ただ涙を溢すだけの私の肩に、大樹がそっと手を置く。夢の中のはずなのにその感触は本物で、私はすぐに握り返した。


『俺は小枝の中にいるから。俺たちは双子だろ?』


同じお腹から生まれて、同じ場所で育った私たち。


実は大樹には胎内(たいない)記憶があって、『小さい時は小枝と同じ部屋にいて、ずっとくっついて寝てた』と教えてくれたことがある。

『早くお外に出たいね』っていつも話してて、小枝と一緒だったから寂しくなかった』とも言っていた。


私は現実主義だし、胎内記憶だとかは信じないタイプだけど、生まれる前から大樹と一緒にいたこと。

形になる前から隣にいて、ふたりで一緒に生まれたいねって話をしていたこと。

そうして双子として生まれたいとお互いに選んだことは、絵空事でもご都合主義でもいいから信じたい。


そして叶うなら、また大樹と一緒に生まれたい。


「大樹、ありがとう」

そう感謝を伝えた途端、心の鉛がなくなった。

私が笑うと大樹はようやく大樹らしい太陽のような顔で、ニカッと笑ってくれた。