それともうひとつ、私はずっとおばあちゃんにお礼を言ってなかったことがあった。それは……。


「あと、大樹のことも。いつも手を合わせてくれてたでしょ」

仏壇に、毎日新しいお線香と綺麗なお花が供えられていたことは知っていた。


「位牌と遺骨は尚子が持っていったけど、それでも私にとっては大事な可愛い孫だからね」

大樹にとっても、この家は大切な場所だったから。たまに帰ってきてはいつもみたいに廊下をドタドタと走り回ってるんじゃないかな。

……そうだといいな。


「小枝」

おばあちゃんが語りかけるように名前を呼んだ。


「ここは小枝のもうひとつの家なんだから、いつでも帰ってきなさい。今度は尚子も一緒にね」

「うん。おばあちゃんもいつか東京に遊びにきて。私、東京が大嫌いだったから、あんまり遊べる場所とか詳しくないけど、おばあちゃんが楽しめるようなところを探しておくから」


呼吸がしづらいと思っていた東京だけど、きっとこの町のように好きになれるところがあるはず。

それをこれから見つけていくことも、私がやりたいことのひとつだ。


「あら、それは楽しみね。じゃあ、ゆびきりげんまん」

おばあちゃんと私の小指が重なる。

これは遠い口約束じゃない。ちゃんとゆびきりをした明るい未来の約束だ。