「……お母さん、私ね。あの頃本当に苦しくて、毎日毎日消えてしまいたいって思ってた」
お母さんのことも大樹のことも大切だったはずなのに、それを簡単に上書きされてしまったほど、あの日々は真っ黒なものでしかない。
そういう気持ちのまま17歳になった。
だから、向き合ってこなかった私とお母さんの距離はあの頃となにひとつ変わっていない。
「私、本当は東京に行ったことを後悔してた」
変われるはずだと思って、この町を離れた。変わってくれるはずだと希望をこめて、お母さんについていった。
だけど東京に行ったあともすれ違ってばかりで、お母さんの愛情は私にはないんだと諦めた。
私の居場所はここじゃないって何度も思った。ひとりきりの家で過ごす夜はとても長くて、同時に芽生えた感情も必死で自分の中に押し込めてた。
でも、その気持ちを認めること。それがまず私の一歩。
「……お母さん。私、寂しかったんだよ」
七年前も今も、私は同じ。諦めたふりをして、仕方ないとため息をついて、大丈夫と自分に言い聞かせる。
だけど本当は、大丈夫なときなんてない。
私はずっと、ずっと、寂しかった。
『小枝、ごめんなさい……っ』
お母さんが声を詰まらせながらで何度も私に謝る。