『うん。元気よ。小枝は年末に風邪を引いてたって聞いたけど……』

「え?お、おばあちゃんから聞いたの?」

『うん』

おばあちゃんがお母さんと連絡をとっていたなんて知らなかった。お互いに極力お母さんの話題は避けていたから。


『電話でね、「小枝は自分から気持ちを口に出す子じゃないから私にはなにも言わないけど、親ならちゃんと口に出せる環境を作ってあげなきゃダメだ」って叱られたの』


……そんなことを、おばあちゃんが言っていたなんて。私はスマホを持つ手をギュッとした。


『「もし変われないのなら、小枝はこのままうちで預かる」って。「学校や手続きで小枝が大変だけど、尚子のところには帰せない」って』

お母さんの声がわずかに震えた気がした。


あの頃、お母さんとおばあちゃんはいつも喧嘩ばかりで、お母さんはおばあちゃんの言葉なんて受け入れなかった。

聞き流して、反発して、それでまた喧嘩をする。ずっとその繰り返しで、私だけじゃなく、ふたりの溝もこのまま埋まらないと思っていた。

でも、お母さんはおばあちゃんに叱られて、それで私と話そうと電話をかけてくれたのだろう。


もしかしたら、私が勝手に決めつけていただけで、諦めていただけで、実はお母さんも変わろうと思ってくれていたのかもしれない。


『小枝、正直に言うね』

お母さんの言葉に、私はゴクリと唾を飲んだ。