そのあと、おばあちゃんはお昼ごはんに即席麺で作った塩ラーメンを出してくれた。
こたつに入りながら漂う食欲をそそる香りと熱々の湯気。ラーメンにはおばあちゃんがよく一品料理として出してくれる煮たまごや今が旬のちぢみほうれん草が入っていて、お店で出されているものみたいに美味しそうだった。
「ねえ、おばあちゃん」
箸をつける前に、私は真正面に座るおばあちゃんに問いかける。
「ん?どうしたの?」
冬休みが終わるまであと四日。カレンダーの日付が変わるたびに、焦りと不安が入り交じっていた。
「……私がここにいたいって言ったら、迷惑?」
多分、初めておばあちゃんの前で弱音を言った気がする。するとおばあちゃんは全力で首を横に振った。
「迷惑じゃないわ。小枝がこの家に帰ってきてくれて、本当に楽しかったし嬉しかった。昔は小枝に選ばせてあげられなかったけど、今は違う。小枝が望むようにすればいい。私はいつでも小枝の味方よ」
……私の望むもの?
そんなこと考えたこともなかった。
だって大樹は10歳で止まったまま動き出すことはない。なにかが違えば、なにかが変われば、あの日死ぬはずだったのは私だった。
だから幸せになることも、気持ちが満たされることも、死んでしまった大樹に申し訳なくて、望んではいけないことだと思っていた。
大樹は今でも夢の中で私に笑わない。
苦い顔をしたまま、私を見つめるだけ。
席を代わってと言ったこと、生き残った私がこんなにも生きるということに苦しんでいるということ。
大樹は、私に怒っているのかもしれないし、責めているのかもしれない。
でも、一番はきっと呆れてる。7年前となにひとつ変われていない、この渦を巻くような気持ちのままの私に。