そんな冷えきった家庭環境のまま成長した私はお母さんの前だけじゃなく、誰といても笑えなくなっていた。

学校でもひとり。家にいてもひとり。


強くいなくちゃ。強くいなければいけない。そう自分を必死で奮い立たせながら私は弱い自分を隠していた。


心が追いつかないまま月日だけが流れた。

だけどそんな日々の中で、心と身体がバラバラだった一番苦しい七年前の自分に戻ることがなによりも怖かった。


怖かったから、私は美瑛で過ごしたすべて――俚斗のことさえも、心の奥の深い場所に閉まってしまった。

きみを思い出せば弱くなる。泣きそうになる。

だから、きみを思い出すことをやめた。


手のひらに刻まれた傷跡だけを残して。そのうち、本当に俚斗のことさえも忘れてしまい、その傷がどうしてついたのかも思い出せなくなってしまった。


あれから時間は過ぎて、私は17歳になった。

美瑛町は昔と変わらずにひんやりと寒くて、根深く残った雪はまだ溶けそうにない。