私が言うのもおかしいけど、俚斗は女の子みたいな顔をしている。瞳がビー玉のように丸くて、髪も一切クセがない柔らかそうな毛質。
もしかして俚斗も本当は女の子だったりして。
私はひとりでバカな妄想をしながらバスの振動を感じていた。その振り幅が大きくなると、俚斗の頭がその揺れに合わせて動きはじめる。
そしてバスが曲がったのと同時に、俚斗の頭が私のほうへ。慌てて支えようと私は右手で俚斗の頬に触れた……と、その時。
触れた右の手のひらが急に熱くなって「痛っ……」と声がもれた。
なにが起きたのか分からない。
ただ、痛さを感じた右の手のひらが一皮剥けていて、火傷のような跡になっていた。そこは熱を帯びてズキズキとするのに、何故か氷の塊に触れたかのように冷たい。
「ん……。あ、ご、ごめん!俺居眠りしちゃった」
そう言って俚斗が目を開ける。どうやらなにも気づいていないようだ。
「どうしたの?」
手のひらを見つめている私に俚斗が不思議そうな顔をした。
「い、いや、べつに!」
私は俚斗に見えないように右手を隠した。握りしめた手のひらはまだジンジンとしていて、痛みが夢ではないことを教えてくれる。
……俚斗は一体、何者なんだろう。
だけど、俚斗も私と同じで、誰にも言えない秘密を抱えているということだけは分かった。