しばらく他愛ない話をしたあと、私たちは同じバスで帰ることになった。
珍しく車内は混んでいて、座れる場所を探していると、優しいおじさんが一番後ろの席を譲ってくれた。
「大樹が座っていいよ」
「なんで? 並びで座ればいいじゃん」
「で、でも……」
何故か躊躇っている俚斗を疑問に思いながら、私はなるべく限界まで身体を窓際に詰めて、ひとりぶんのスペースを作った。
しかもそれを見ていた同じ座席の人が次々と横にズレてくれたから、ムリをしなくても俚斗が余裕で座れる場所ができた。
俚斗は少しホッとした顔をして「じゃあ……」と腰を下ろす。
すると、車内は暖かいはずなのに、隣からひんやりとした空気を感じた。私は思わず頭上にあるエアコンを見つめる。
……クーラーが付いてるわけじゃないよね?
そのあとバスはゆっくりと発進した。人も多いからバス停に停車する回数も多い。だからいつもよりもバスに乗ってる時間が長く感じた。
遅くなったらお母さんやおばあちゃんに怪しまれるかもしれない。
ソワソワとしながら、ふと隣を見ると、俚斗が下を向いていた。どうしたんだろうと顔を覗き込めば、そこから寝息のようなものが聞こえてくる。
……ね、寝てる?