「やっぱり!姉弟がいる人って、なんか雰囲気で分かるんだよね」
俚斗は白い息を深くはいて、池の周りにある手すりに触れた。
「俺はひとりっ子だから、兄弟がいたらなにか変わってたんじゃないかなって思うよ」
「変わってた?」
「うん。だってさ、同じお腹から生まれてくるなんて、この雪景色よりも神秘的じゃない?」
ほら、また急に大人びたことを言う。
何故だか俚斗の言葉が胸に染みて、私はグッと泣くのを堪えていた。そして大樹のことを考えた。
お母さんの苦しみは私には分からない。でも、私も大樹がいなくなって、まるで身体が半分になってしまったような気持ちになった。
なにかが欠けてしまった。なにをしても埋まらない。大樹がそんなに大切な存在だったなんて知らなかった。
もっと大切にすればよかった。もっと優しくしてあげればよかった。
この雪のように後悔ばかりが心に積もっていく。
「……俚斗はさ、どうしようもなく苦しくなった時、どうやって乗り越える?」
俚斗はポジティブだから、なにか私の背中を押す言葉をくれると思った。でも俚斗から出てきた言葉は私の想像と少し違った。
「俺は逃げる、かな」
「え……?」
「逃げるって大事だよ。それで自分を守れることもあるもん。だからそれが弱いことだなんて俺は思わない」
逃げてもいいと言われた気がして、心が少しだけ楽になった。