「小枝に男の子の格好をさせたり、大樹のランドセルで登校させたりして、小枝をどうしたいの?ちゃんと大樹のことを受け入れなさい。もうあの子はいないのよ」

「なんでそんなに冷たいことを言うの!?」

お母さんがおばあちゃんを鋭い顔で睨みつける。


「子どもを失った母親の気持ちが分からないの?……お母さんは大樹のことが可愛くなかったのね」

「そんなはずないでしょ!」

「だったらなんで……っ」


お母さんは顔を手で覆いながら肩を震わせていた。それを見たおばあちゃんは悲しい表情で、諭(さと)すように言う。


「大樹のことは本当にツラいし、事故を起こした運転手のことは一生恨むわ。でも、そこに縛られ続けていても仕方ないでしょう」

おばあちゃんの瞳には涙が溜まっていた。


「……尚子には小枝がいる。なにもかも失ったわけじゃない。ちゃんと小枝のことを見てあげないと、あの子まで離れて行ってしまうわよ。それでもいいの?」

「……いいわけないでしょ!」


ふたりは居間の襖の向こう側に立っている私のことに気づいてない。

私のことで喧嘩してるのが苦しいのに、何故か立ち去ることもできなかった。