でも結局、いくら探しても猫は見つからなかった。

私たちは探し疲れた足を休めるように『白金インフォメーションセンター』へと入る。

十勝岳に見立てたとんがり屋根が印象的で、中には観光案内やお土産売り場があって休憩できるスペースもあった。

喉を潤すために自動販売機で飲み物を買って、私と俚斗は椅子に座った。


「飲む?」

温かいココアをひと口飲んで、俚斗に差し出す。

俚斗はビックリした顔をしたあと「ううん、大丈夫」と断った。


もしかして、こういうのは苦手なのかな。

私は大樹と飲み物の回し飲みなんて当たり前だったからあんまり考えずに聞いちゃったけど……。


建物の窓から見える外は北風が吹いていて、落ち葉がくるくると舞いながら飛んでいた。


「……これで雪が降ったら猫は死んじゃうのかな」

私は小さく呟いた。


前までは『死ぬ』という言葉なんて、テレビのニュースで見るだけのものだった。

だから怖いなんて感覚もなくて、私にとっては遠いものだった。だけど、大樹が死んでからは、いちいちその言葉に敏感になってしまう。


近くにいた人が数秒後にはもういない。それは残された人たちの人生を変えてしまうぐらい大きなことだから。

すると、俚斗が寒そうな外を見ながら言う。


「北海道の野良猫はそれなりに雪に免疫があるから、温水がでるパイプの上にいたり物置の軒下にいて冬を越す猫も珍しくないよ。ちゃんと生きる方法を知ってる。それでも寒さに負けちゃう猫もいるけど、そこは強さを信じるしかないよね」


やっぱり俚斗は同級生の男の子たちとは違う。夢見がちなことは言わないし、ちゃんと現実的。

そういう私にはないものを俚斗は持ってるから、憧れのような気持ちが芽生えてくる。


「うん。無事なことを信じよう」

私がそう返すと、俚斗はいつものように優しく笑った。