目的地に到着してバスを降りる。
この前まで紅葉していた木々たちは冬の準備をはじめていて、雪が降ることを知らせる雪虫が私の周りを飛んでいた。
青い池まで続く遊歩道を歩いて、「はあ……」と深い呼吸をすると、目の前に真っ青な池が見えた。
春から夏にかけてが一番綺麗に見えると言われているけれど、エメラルドグリーンとコバルトブルーの真ん中のような色はいつ見ても胸が弾む。
「……綺麗」と小さく呟いたあと、ふと隣を見ると同い年くらいの男の子が立っていた。
黒い髪の毛がさらさらと揺れていて、落ち着きがないと言われている同級生の人たちに比べて、佇(たたず)まいがとても凛としていた。
……観光の人だろうか。
でも近くに親がいる気配はない。じっと見すぎたせいで男の子と目が合ってしまった。
「今日はあんまり青くないでしょ」
この池に負けないくらい綺麗な瞳をしていたから、心臓が知らない音で高鳴った。
私はすぐに後ろを確認したけれど誰もいないから、恐らく私に話しかけているんだろう。
「昨日のほうが綺麗だったよ。晴れてたしね」
初めて会ったのにまるで友達のように話しかけてくる。その馴れ馴れしさに戸惑いながらも、男の子は私に近づいてきた。