お母さんから求められた手。

それは痛いくらい力強くて、これからは私がお母さんの支えになろうと思った。

まだ悲しいけれど、お母さんとならいつか乗り越えられる日がくるって。だけど、お母さんの気持ちを受け止めるように背中に手を回そうとした瞬間に聞こえてきた声。



「大樹」

そして何度も何度も大樹の名前を繰り返して、私をきつく抱きしめる。

直感で、お母さんが求めているのは私じゃないと気づいた。

今抱きしめているのも私じゃない。

大樹がよく着ていたTシャツを見て、お母さんは私を大樹の面影と重ねているのだ、と。


大樹は本当に愛されていた。お母さんにとって大樹は自分の全てだった。

だから私は嫉妬していた。

本気じゃないのに、大樹を邪魔だと思っていた。

大樹はいつだって私をそんな風に扱ったことはなかったのに。


ごめんね。

一瞬でも、大樹なんていらない、と考えてしまった私に罰をください。


あの日、後部座席に乗るはずだったのは私。

そして大樹はお母さんと生き残るはずだった。

私が運命を変えてしまった。なにも悪くない大樹の人生を奪ってしまった。必要とされているのは、生きるべきだったのは大樹のほうだったのに。


できることなら、大樹と私を代えてください。