生まれたとき、私が先で大樹はあとに生まれた。だから双子でも立場的には私がお姉ちゃん。

大樹は元気すぎて危なっかしいところがあるから、私がしっかりしないとって思った。私だけは冷静でいないとって。

その一方で、大樹が羨ましかった。なにをしても許されて、誰からも好かれている大樹のことが。


「あら、電話だわ。ちょっと待ってて」

リビングに鳴り響く音。おばあちゃんの慌ただしい足音が遠退いたあと、私は大樹を思い出すようにTシャツに腕を通した。


涙がでた。大樹がいなくなって初めての涙だ。


大樹なんて、いなくなっちゃえって思ってた。大樹がいなければって何度も考えた。

でも本気でそう思ってたわけじゃない。


大樹にはたくさんいい所がある。可愛げがない私を一番近くで見て、一番の理解者だった。それなのに私は……。

その時、ガタッと背後で物音がして振り向くと、そこには虚ろな目をしたお母さんが立っていた。体重は激減して、頬もかなりやつれている。


「ど、どうしたの?お母さん……」

涙を拭ったあと、気づけばお母さんが私を抱きしめていて、それは久しぶりに感じる温もりだった。