「今日はしばれるね。観光の人?」

〝しばれる〟とは北海道の方言で凍えるぐらい寒いという意味。一度だけ東京で使ったら意味が周りに通じなくて、それ以来私は使ってないけど。

観光という言葉に私は小さく首を横に振る。


「じゃあ、地元の子?でも見かけない顔だよね。どこから来たの?」


男の子があまりにペラペラと話しかけてくるから、私は警戒心を剥き出しにして目を反らす。

それでも何故か男の子は私に近づいてきて、その足音がぴたりと隣で止まった。


「今日は俺たちの貸し切りだね」

あはは、と笑う口元を横目で見ながら、私はさらに迷惑そうなオーラをわざと出した。

たしかに珍しく観光客の姿がない。おそらく吹雪で飛行機が欠航になったからだろう。


せっかく久しぶりの青い池なのに男の子のせい集中できない。もっと離れた場所で見ればいいのに。


「この池ってさ、ここから見ると水色だけど水自体は透明で酸性もない普通の水なんだよ。だからまだ青い原因が分かってないんだ」


べつに聞いてもないのに豆知識を披露してくる。なんだか上から目線で説明されてる気がしてムッとした。


「そんなの知ってるよ。昔住んでたことあるから」

シカトするはずが思わず反論してしまった。