勝手な大樹への嫉妬心で危ない目に遭ったことは、完全に私が悪い。

怒られるのも当然だし、叱られるのは当たり前。でも、私にとってもっと怖いのは、お母さんに嫌われることだった。

幻滅されたくない。

ただでさえ大樹との差があるっていうのに、これでまた大樹は褒められて、またお母さんから可愛がられる。そんなのはイヤ。私もちゃんといい子にするから、だから……。


「はあ……分かったよ。その代わり、明日からは絶対に俺と帰ること。ひとりで家に帰ったりしないこと。約束だからな」

「……うん」

大樹は、本当にお母さんには言わなかった。

なにごともなかったかのように、学校の出来事をお母さんに報告してまた褒めてもらっている。


大樹のことは嫌いじゃない。でも助けてもらったお礼を素直に言えないほど、また新しい嫉妬がすぐに生まれてしまう。

お母さんから向けられている笑顔や愛情が羨ましくて仕方がない。だって、大樹が風邪をひいた時も犬に噛まれた時も、お母さんは真っ青な顔をして大樹のことを心配した。


大樹は元々、生まれた時から心臓へと繋がる血管が普通の人より細くて、お母さんが必要以上に気にかけていることは知っていた。

でも、それにしたって私と大樹への接し方は全然違う。

だからといって、それが苦しいなんて言えるわけがない。

言葉にすれば、今以上にお母さんの気持ちが私から離れていくだけだ。