「俚斗はひとりじゃないよ」

「え……?」

私は口下手で言葉足らずだから、この気持ちを全部伝えられる自信はない。でも、それでも……。


「俚斗、見て」

私はそっと右の手のひらを広げる。


「これね、7年前に俚斗に触った時についた傷」

「え……?」


ごめんね、俚斗。本当は私も隠しておこうと思った。

俚斗は私を傷つけた過去があると知れば、落ち込んでしまうかもしれない。


でも私も普通の人とは違うと、周りから腫れ物みたいに扱われたことがある。なにかはひとつ違うことがあるだけで、みんなそこから距離をとる。


だから俚斗も今まで人との関わりを避けてきたのかもしれない。

でもそんな奇病があっても離れたくないと思う人がいること。

俚斗がなによりも怖いと言っていた傷つけることを、こうして傷つけられた私が怖さなんて感じていないということ。

それを知ってほしい。


俚斗は苦しい過去のすべてを話してくれた。だから次は私の番。



「本当は、本当は私たち――」

ぐるぐると駆け巡るのは、封印していた私の記憶だった。