雨の音は体育館の屋根に響いていて、寒さはまだ感じるけれど、こうしてヒーターの前にいれば耐えられる。


「……俚斗は洋服、脱がないの?」

私にコートを貸したせいで、俚斗のほうが濡れている範囲は広い。


「あー、俺、実はトレーナーの下になにも着てないんだよね」

「恥ずかしいの?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど」

俚斗から滴り落ちる水滴が小さな水溜まりのようになっている。


「じゃあ、洋服を脱いで。脱がないなら脱がすよ。風邪ひいちゃう」

「わ、わかった。わかった!」

そう言って俚斗は洋服を脱いだ。


オレンジ色に照らされた俚斗の身体。見た目よりも筋肉質で肩幅も広い。脱がないなら脱がせるなんて大見得をきったくせに、今は私のほうが直視できずにいる。

ふたりだけの体育館は、呼吸の音さえも躊躇ってしまうほど静かだった。


「ねえ、俚斗」

「ん?」

喉につかえている言葉はいくつもある。でも私が最初に言わなきゃいけないこと。それは……。


「ごめん。私、俚斗が施設に住んでるって知っちゃった」