……あれ、この会話、昔どこかでした気がする。

私の苦しかった思い出の中にいる男の子。

背丈は同じくらいだったけれど、とても大人びたことを言っていた記憶が途切れ途切れに浮かんでくる。


……あの子は誰だっけ?


「でも懐かしいな。俺もこうして猫を探しにいった。ほら、前に話した友達と」


頭がモヤモヤする。欠けていたなにかが近づいてくる感じ。


「ねえ、その友達の名前って……」

私はおそるおそる俚斗に聞いた。

「ん?」と俚斗は少し間を開けて、すぐにその唇がゆっくりと動く。


「大樹だよ」

ドキッと心臓が鳴った。

その瞬間、頭の中で忘れていた記憶たちがよみがえる。それは降りやまない雪のように私の肌に溶けて、そして繋がる。


ああ、そうか。そうだったんだ。

気づくと私は、〝きみからもらった傷跡〟を固く握りしめていた。