「全然平気。いつもこんな感じだし」
「で、でも……」
「それにさ、正直あんまり温度が分からないっていうか、寒いとか暑いとかの感覚はあるんだけど、俺自身が氷みたいなもんだから感じないんだよね」
「………」
「だから多分、今の時期に半袖とかでも平気なんだけど、そこは周りの人に不審がられちゃうからコートとかを合わせて着てるだけ。なんかマネキンみたいだよね、俺」
俚斗の口調はどこか他人事のように聞こえたけれど、そういうことに思い悩んでいた時期を通り越してしまったようにも見えた。
俚斗と一緒にいると忘れそうになってしまうけれど、私の目に見えない奇病は確実に彼の中にいる。
いつか〝IceHailSyndrome〟について調べた時に、とても嫌な文面が並んでいて足がすくみそうなほどの衝撃を受けたことを思い出した。
原因不明、重大な障害、発病から五年以内。そんなレールの上に俚斗が乗っているんだと思うと怖くてたまらない。
目には見えないし、俚斗は弱音なんて吐かないから分からないけれど、きっと私の知らないところで苦しいことがたくさんあると思う。
ギュッとテーブルの上で拳を握ったところで、注文したカレーうどんが運ばれてきた。この気持ちとは真逆に、スパイシーないい香りが漂っている。
俚斗が「いただきます!」と目を輝かせているから、私もついその笑顔に安心してしまう。
暗い気持ちにならないように、今はただ俚斗との食事の時間に集中しようと、私も箸を手に取った。